酒場紀行 vol.5
鎌倉ふくみ
鎌倉駅西口から徒歩5分。静かな通りにあるビル1階に、鎌倉ふくみがある。白いのれんがひときわ目立つ。階段を上がると「ふくみ」という和食の店がひっそりと現れる。予約を取るのがなかなか難しい人気店だが、それも納得できる。静謐な空気と共に、丁寧な仕事を積み重ねる店主の池田さんの姿が目に入る。和食の命は「丁寧な仕事」にある。その言葉を、ここでは目で、舌で、肌で感じられる。

料理は、季節の素材を活かす色彩や柄の器を使用する。素材を引き立てる味付け、盛り付けの細やかさ、火入れの絶妙さなど、一口ごとに和食の奥深さを思い知らされる。料理に合う日本酒や焼酎も良いが、鎌倉クラフトジン露も和食料理を引き立てる。どんな料理にも合うのが露の持ち味だ。
今、店では新たな挑戦が進んでいる。露を使った梅酒の仕込みだ。青梅の瑞々しい香りと、露の爽やかな香りが甕の中でじっくりと溶け合っていく。想像するだけで、口の中にさわやかな甘酸っぱさが広がるようだ。ふくみさんだからこそ、梅一粒一粒に気を配り、酒の温度や日光の加減までも細かく調整する。完成すれば、和食の膳にそっと寄り添う、優しい味わいの梅酒になるだろう。でも、高価な梅酒になるだろうなと、店主の池田さんは苦笑いする。(笑)

この店に来ると、もちろん贅沢さもあるが、誠実さと仕事の大切さを思い出す。一つひとつの料理に込めた丁寧な仕事は、和食の基本であり、店主の池田さんの心意気そのもの。梅酒の香りもまた、その心意気を伝える一滴だ。年末ごろの出来上がりがとても楽しみだ。鎌倉を訪れたなら、ぜひ立ち寄りたくなる、そんな特別な場所である。