酒場紀行 vol.7 | クラフトジン露(つゆ)

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酒場紀行 vol.7

大船「BARテンダーズ」

 大船駅東口を出て、にぎやかな商店街を抜けると、ほのかな灯りが導くビルの2階に一軒のバーがある。そのお店は「BARテンダーズ」。今年で13年目を迎える。この店を中心に、「BARテンダーズ ダイニング」「パオーン」「大船バル」と4店舗を展開するのが、オーナーバーテンダーの小林正宗さんだ。お店に入るとひときわ存在感を放つウイスキー樽に鎌倉クラフトジン露の空き瓶が並ぶ。こんなに目立つところに・・・本当に感謝しかない。

 「露は、うちの定番であり、誇りでもあるんです」と小林さんは語る。店内のメニューや黒板にも露の文字がいくつも見える。それは、ただのスピリッツではなく、この街の空気や人の温もりと響き合う象徴のようでもある。

 小林さんの夢は、かつてプロサッカー選手になることだった。高校時代にはプロテストまで受けたが、その場で「差」を感じたと言う。「自分がどこまで通用するのか、あのときははっきり見えました。」潔く夢を切り替え、選んだのはまったく別の舞台だった。カクテルというフィールドで再び燃え始めた。

 「フレッシュフルーツを使ったカクテルは、季節の匂いがします。お客様と会話をしながら、新しい一杯が生まれる瞬間が楽しいんです」その言葉通り、この夜は、露に梨を合わせたカクテルを注文した。梨の瑞々しい爽やかな甘み、露のボタニカルが穏やかに広がり、飲み終えた後にも清らかな余韻が残る。とても、おいしかった。

 「お客様も、バーテンダーなんです。」「だから、お店の名前がBAR TENDERSなんです。」小林さんはそう言って微笑む。カウンター越しに交わす言葉や笑顔の一つひとつが、カクテルという作品を完成させていく。その柔らかな姿勢の奥に、サッカーで培った集中力と勝負勘が息づいている。今後はアジア進出も視野に入れているという。「日本のバーテンダー文化、そして露のようなクラフトスピリッツを、世界に伝えたい」その言葉には、挑戦者の顔と、地元を愛する職人の誇りが同居していた。

 ベテランバーテンダーの橋本さんも、そんな背中を追いながら日々カウンターに立つ。「お客様との会話が楽しいんです。露をベースにしたカクテルは、初めての方にも鎌倉らしさを感じてもらえるんですよ」その表情には、この店の温度がそのまま映っていた。グラスの中で氷が鳴り、果実がほころぶ。その音を聞きながら、小林さんは言う。「サッカーの夢は形を変えました。でも、今も勝負は続いています」「今度、若きバーテンダーが露を使ってカクテルコンペティションに参加します。ぜひ、応援に来てください。」この夜も大船の街に、露の香りがやさしく満ちていた。

BAR TENDERS https://www.instagram.com/bar__tenders/


この記事の著者

秋山 栄二

はじめまして。新聞社を退職後、ラジオ局の役員を経て、2024年11月に株式会社風雅を設立しました。主な事業は酒類販売小売業、広告代理店業です。趣味は旅行と食べ歩き。おいしいお店やBAR情報など紹介していきますのでお楽しみに!

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