酒場紀行 vol.8
大船 g’z BAR
大船駅東口から約5分歩いた先のビル2階に「g’zBAR」はある。
今年12月で開業20周年。その歴史を静かに重ねてきたのが、オーナーの笠原さんだ。

「セカンドハウスみたいにお店を使ってもらえたら嬉しい。気軽に来てリラックスしてください。」笠原さんはいつも柔らかな笑顔で迎えてくれる。その笑顔には、壁をつくらない温かさがある。「嫌いな人はいない」という彼の言葉は飾りではなく、日々の接客に息づいている。カウンターには、そんな人柄に惹かれて集う友人や常連が絶えない。彼の周りには、いつも自然に笑顔の輪ができる。
この店は、もちろん鎌倉クラフトジン露も楽しめる。爽やかな香りが、心地よい音楽と混ざり合う。「最近は、湯河原との二拠点生活も考えてるんです。温泉があって、食事はなんでも美味しい。鎌倉も湯河原も、いろんな風が吹き抜けるのがいいですね。」そう語る笠原さんの目は、遠くの海を見つめるように穏やかだ。湯河原の好きな場所を尋ねると、「五所神社ですね。」と微笑んだ。鎌倉の総鎮守として、天照大神をはじめとする五柱の神霊が祀られている。地域の人々が手を合わせ、神聖な風が通り抜ける場所。その清らかな空気が、どこかこの店にも宿っているようだ。
いま、カウンターではアルバイトの木下くんが活躍している。彼は看護大学で来年地元の病院に就職が決まっている。木下くんの明るい笑顔と真面目な仕事ぶりで、店に新しい風を吹き込んでいる。「ちょっといい料理屋があるんですよ」と、木下くんにお店を任せて笠原さんが私を案内してくれた。ほど近いその料理屋はお寿司も握る。仕事が丁寧で、一貫一貫が美しかった。「美味しい。」その一言に尽きる。料理人の所作に、笠原さんと通じる誠実さが感じられた。
開業20周年のイベントはまだ未定という。夜が更けても、g’zBARには灯がともる。人が集い、笑い、また次の風が吹き抜ける。笠原さんのやさしい人柄がつくるこの空間は、まさに大船の心地よい風そのものなのかもしれない。
g’z BAR https://www.gz-bar.com

