露の誕生秘話 vol.4
露のサンプル出来上がる
素材が決まり、ようやく「鎌倉クラフトジン」を形にする準備が整った。いよいよ試験蒸留だ。頭の中でイメージしていた香りや味が、本当にグラスの中で息づくのか心配だった。数週間後、沼津蒸留所から小さなガラス瓶に入れられた「露」のサンプルが届いた。透明な液体が朝日を受けてキラリと輝いて見えた。「露」は、単なるスピリッツではない。鎌倉の名水と人とのご縁、そして禅の心から生まれたジンだ。小さなガラス瓶に宿る清らかな気配が伝わってきた。この日から「露」の物語が本格的に始まるこを思うと心がワクワクしてきた。

はじめて味わう、露の一滴
グラスに注がれた透明な液体を前に、緊張していたのかグラスを持つ手が少し震えていた。幾度となく重ねてきた香りのテスト。その答えが今、目の前にある。ボトルキャップを開けて鼻を近づけると、ジョニパーベリーの清らかな香りに、爽やかな柑橘が漂ってきた。「すごく良い!」。深呼吸をしてから、目を閉じてもう一度鼻を近づけてみると、どこか懐かしいよもぎの余韻が重なってきた。さて、いよいよ「露」をはじめて口にする瞬間が訪れた。

ひと口含んだ瞬間、想像以上に澄み切った輪郭が広がった。ジョニパーベリーの凛としたベースがしっかりと感じられ、そこにグレープフルーツピールの爽やかな苦みが重なり、とても良い感じだ。そして、後からよもぎが柑橘の苦みを品良く際立たせ、落ち着いた余韻が静かに訪れた。思わず「これだ!」と胸の奥でつぶやき、露の可能性を感じた瞬間だった。

