酒場紀行 vol.11
MONDE BAR 品川 ─ ご縁をつなぐ一杯
品川駅直結の商業施設「アトレ」が開業した2004年、そのアトレ4階に誕生したのが「MONDE BAR 品川」である。創業は1985年、銀座8丁目にあったBARだ。「地球上、酒の主は水」という言葉を掲げてスタートしたMONDE BARの新たな舞台がここ品川に移った。

昼の11時に開店するBARは、東京でも珍しい。大きな窓から差し込む自然光の中で味わう一杯は、夜のBARとはまた違う静けさと深みを持つ。旅人やビジネスマンが行き交うターミナルの喧騒の中で、MONDE BARは時間の流れをゆるやかに変える。磨き上げられたカウンター、無駄のない所作、そこには、長谷川氏が掲げた哲学が確かに息づいている。
私がこの店を訪れたのは、鎌倉クラフトジン「露」を手にした頃だった。いつもカバンの中にボトルを忍ばせていた。バーテンダーの石田武年さんが、真剣な眼差しでボトルを手に取り、香りを確かめながら丁寧に一杯を作ってくれた。「面白いジンですね。鎌倉の空気を感じます。」その一言が、なにより嬉しかった。

石田さんは、常連客である酒問屋・株式会社武蔵屋の社長の竹内元さんを紹介してくれた。それが、私にとって大きなご縁となって今では鎌倉クラフトジン露を取り扱っていただいている。武蔵屋は都内を中心としたBARからの信頼が厚い。すべては、MONDE BAR品川のカウンターから始まった出会いだ。BARは、言葉ではなく“空気”でつながる場所だと思う。一杯の酒を介して、人と人、心と心が自然につながっていく。MONDE BAR品川は、その象徴のような空間である。

グラスの氷が静かに音を立てる。午後の光に揺れるグラスを見つめながら、私はあらためて感謝を覚える。MONDE BAR品川──この場所があったからこそ、「露」は新たな道を見つけることができた。水を敬い、酒を尊ぶ哲学。その一杯が今日も誰かの人生を静かに照らしている。
モンドBAR品川 https://mondebar.com

