酒場紀行 vol.13
ヘルシンキ Beer BAR「Minuuttibaari」
2024年6月、東京国際空港(羽田空港)からフィンランド・ヘルシンキへ一人旅に出た。フライトは14時間余り。ロシア上空を迂回して飛行するため、いわゆる「北回り」を飛行する。オーロラを見やすい座席を予約できたが、残念ながら今回は見ることはできなかった。北極圏上空からグリーンランドの氷床がきれいに見えた。ヘルシンキ・ヴァンター国際空港から電車とトラムを乗り継いでホテルにチャックインした。

ヘルシンキのホテルは、街の中心から少し離れた湖畔のホテル。朝は湖畔をジョギングし、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。ホテルの朝食はビュッフェ。席に案内されるとスタッフがコーヒーをカップに注いでくれる。そして、コーヒーが入った大きなポットをテーブルに置いていく。フェンランドは世界でもトップクラスのコーヒー消費国だ。北欧サーモンや魚介がゴロゴロ入ったスープやパンやチーズの種類が豊富で、どれもおいしかった。朝食を済ませたあと、湖面を眺めながら本を読む。その後、サウナに入ってととのう。昼過ぎまでそんな時間をゆっくり過ごすのが、この旅の贅沢だった。

午後、トラムに乗ってヘルシンキ中央駅へ向かう。
目的は駅構内にある小さなBeer BAR「MINUUTTIBAARI」。列車を待つ人、旅立つ人、再会を喜ぶ人――。そんな行き交う乗客を眺めながら、冷えたビールを一杯やるのが日課になった。滞在中、気づけば毎日ここに通っていた。

6月のヘルシンキは日が長く、昼間はシャツ一枚で過ごせるが、夜風は思いのほか冷たい。だからこそ、この駅構内のぬくもりが心地よい。屋根がガラスで覆われていて暖かい。
カバンの奥には、日本から持ってきた鎌倉クラフトジン露を忍ばせていた。ある日、いつものように立ち寄ると、カウンターのバーテンダーが声をかけてくれた。「毎日来てるね」と笑う彼に、鎌倉クラフトジン露を一杯すすめてみた。「とても美味しい」と目を丸くして言ってくれたのが、なんだか誇らしかった。

その日から会話が弾むようになり、私はいつも「今夜のおすすめのBAR」を彼に尋ねた。
彼が教えてくれたBARを巡るのも、この旅の楽しみのひとつになった。ヘルシンキの夜は短くても、出会いと温かさに満ちていた。ふと、隣国のエストニアへ行くことを思いついた。ヘルシンキからフェリーで約2時間。早朝に出発すれば、日帰りで帰って来れる。ビールを飲みながらフェリーの予約を入れ、明日に備えてホテルに戻った。(エストニア・タリンの酒場紀行は別章で)

旅のはじまりと終わり、どちらもこのビールスタンドだった。国も言葉も違う人々が、同じカウンターでグラスを傾ける。駅という通過点が、私にとっては特別な滞在地になった。
MINUUTTIBAARI https://www.tripadvisor.com.au/Attraction_Review-g189934-d13229578-Reviews-Minuuttibaari-Helsinki_Uusimaa.html
