鎌倉クラフトジン露の誕生秘話 vol.6
糸島生まれの蒸留機との出会い
沼津蒸留所の朝、狩野川の下流からの風が静かに葉を揺らしている。昨日、ベーススピリッツに漬け込んだボタニカルが熱に包まれ、最初の蒸気が立ち上がる。静寂の中で「露」の命が芽吹いていく。この時点では、製造会社のことはとくに気にしていなかった。沼津蒸留所の蒸留機は、株式会社黄河が製造したことがわかった。その後、確認したい案件があったので、思い切って株式会社黄河(本社=福岡県糸島市)へ電話をした。電話口に出たのは、代表の川波社長だった。「うちはもともとピュアスティーラーなんです。つまり、ハーブの香りを余さず抽出する蒸留機づくりから始まったんです。」その言葉を聞いた瞬間、胸の奥にあった疑問が静かにほどけた気がした。『黄河のハーブ蒸留器「ピュアスティーラー」は、水蒸気蒸留により、ハーブウォーター・ハーブオイルを精製することができます。』(黄河ホームページより)「露」のボタニカルにはジョニパーベリー、グレープフルーツピール、よもぎ茶の3種類。先日、都内のBARでたまたま隣にいたアメリカの大型スーパーマーケットの日本代表と一緒になった。彼は「露」のストレートを飲んで一言「これは、飲むパフュームだ」そうか!香水を作っていた会社の蒸留機だったんだ。香りを大切にする思想を受け継ぐ蒸留機こそ「露」を形にできるのではないか!そんな確信が生まれた。糸島で生まれた蒸留機と鎌倉の名水、そして選び抜かれたボタニカルが一つになった瞬間、私は「露」の未来が確かに見えた気がした。
