酒場紀行 vol.26
海と記憶に寄り添う一杯 — リビエラ逗子マリーナにて
「マリブファーム 逗子マリーナ」と「リストランテAO 逗子マリーナ」で鎌倉クラフトジン露がメニューに加わった。憧れていた場所で「露」が楽しめる。こんなにも嬉しいことはない。若かった頃、松任谷由実 のコンサートを目当てに、この場所を何度も訪れたことがある。当時はボウリング場があり、デートでもよく足を運んだ。あの頃の逗子マリーナは、どこか手の届かない憧れの場所だった。

それから時が流れ、今、わが家はその海を見下ろすマリーナ近くの丘の上にある。バルコニーから海を眺めるたび、憧れていた風景が、いつしか日常になっていたことに気づく。そんな思いを胸に、この日、株式会社リビエラの広報・小泉さんに案内いただき、リビエラ逗子マリーナを巡った。約900本のヤシの木、高級クルーザー、湘南の海と空。都心から約60分とは思えぬ別世界。だが、この場所の魅力は、華やかな景観だけではない。ここには、自然と共に時間を味わう思想があった。

まず、案内いただいたマリブファーム 逗子マリーナは、カリフォルニアの自由な空気を湘南に映したような場所だった。富士山、ヨットハーバー、サンセット。海辺のテラスで供される「露」は、ソーダ、トニック、ソニックとして、その時間に寄り添う。「ここで飲むからこそ特別に感じる」そんな声が多いというのも頷ける。

一方、リストランテAO 逗子マリーナ では、葉山牛や湘南のしらすなど土地の恵みを活かしたモダンイタリアンとともに、「鎌倉ジントニック」として露が供されている。ハーブや柑橘という香りの共鳴が、料理とジンを自然につなぐ。土地を味わう料理に、土地の物語を宿す酒。その組み合わせに、どこか必然を感じる。

だが、リビエラの魅力は、食や景観に留まらない。「美しい海には人が集まる」その想いから2021年より始まった「LOVE OCEANプロジェクト」では、相模湾沿岸13市町を結び、海を守りながら人と地域をつなぐ活動が広がっている。ビーチクリーン、クリーンセーリングレガッタ、海洋ごみ回収を条件にした釣り大会。遊びと環境保全を分けない、その発想が実にリビエラらしい。
さらに印象的だったのは、循環型農業「資源循環」の取り組みである。レストランやバンケットから出る野菜くずを堆肥化し、地元の農家へ持ち込み活用する。そこで育った「リビエラ湘南循環野菜」が再びレストランに戻る。食が、土を育て、また食へと還る。美食の裏側に、こんな静かな循環がある。2006年から20年以上も続くこのエコシステムは、環境省モデル事業にも採択され、アジア初のブルーフラッグ認証マリーナとしての姿勢とも響き合っている。豊かさとは、消費ではなく循環にある。そんな価値観が、この場所にはある。

鎌倉の名水を核に生まれた「露」もまた、自然への敬意から生まれた酒だ。だからこの場所にあることに、深い親和性を感じるのかもしれない。そして、この場所との縁は思い出だけでは終わらない。夏恒例のディスコナイトには、私自身も関係者の一人として関わる予定だ。

会場でMercedes-Benz正規販売店「シュテルン世田谷」による車両展示も計画している。海辺に流れる音楽。グラスの中の一杯。名車Mercedes-Benzの美しいフォルム。かつて客として憧れた場所に、今はつくり手として関わる。人生とは本当に不思議なものだ。若き日に松任谷由実 に胸を高鳴らせたこのマリーナで、今、新たな時間をプロデュースしようとしている。

訪れる場所だったかつての逗子マリーナが、今は関わる場所になった。夕暮れ、グラスを傾けながらそんなことを思う。景色があり、音楽があり、海風があり、その中に酒がある。ここには、記憶に残る一杯がある。それは、なんとも贅沢なことだ。
